小川雅洋(おがわまさひろ)
所属:大学院サステイナブルシステム科学研究科 / 次世代考古学研究センター
職階:特任助教(専任)
専門:マヤ考古学・文化資源学
研究内容
私は中米のホンジュラスやグアテマラを主なフィールドにしており、マヤ文明における地域間交流に焦点を当てた研究を行っています。特に、私が調査研究の対象としているホンジュラスのコパン遺跡は、ヒスイや黒曜石などの往時の重要な石材資源の原産地が比較的近い地理的環境にあるとともに、マヤ文明圏の南東端に位置する主要都市でした。そのため、他のマヤ都市はもちろん、「非マヤ」地域の様々な集団との盛んな地域間交流がなされていました。こうした地域間交流が、コパン王朝の繁栄やマヤ南東地域の社会的・経済的発展にどのように寄与していったのかを探るために、黒曜石を主な研究資料として扱っています。
限られた原産地からのみ産出する黒曜石は、原産地ごとに岩石学的特徴や化学組成が異なるため、原産地で採石した原石サンプルと遺跡から出土する黒曜石石器をそれぞれ分析し、それらを比較することで、各資料の原産地を推定することができます。そのため、私の研究では、特に反証性の担保される非破壊分析法である蛍光Ⅹ線分析によって、遺跡から出土する黒曜石製石器の化学組成のデータを取得し、各資料の原産地推定を明らかにするとともに、往時の石材の獲得戦略や交易ルートなどの解明を目指しています。
このように、私の研究では、金属を利器として使用せず、石器が主要利器であったマヤ文明における石文化や重要な石材資源を扱っています。そのため、次世代考古学研究センターに所属するにあたり、小松の石文化研究部門の各教員とも連携をし、小松の石文化との比較にも今後注力していきたいと考えています。
また、上記の研究に加えて、これまでの現地プロジェクトへの参画する中で、ホンジュラスのコパンデジタルミュージアムでの特別展示企画や、JICA草の根技術協力事業「ティカル国立公園の観光回廊における人材育成と組織化支援プロジェクト」、文化庁の文化遺産国際協力拠点交流事業(中南米における三次元測量とそのデータ処理に係る人材育成)に携わってきました。そのため、次世代考古学研究センターの研究分野として挙げられている3D考古学や文化資源学に係る活動や研究にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
主な著書・論文
- Ogawa, Masahiro.” Source Analysis of Obsidian Artifacts from the Southeastern Maya Region: Focusing Particularly on the La Entrada region and the Outer Periphery,“ In Seiichi Nakamura, Takuro Adachi and Masahiro Ogawa (eds.), Japanese Contributions to the Studies of Mesoamerican Civilization(Studies in Ancient Civilizations 1), Institute for the Study of Ancient Civilizations and Cultural Resources, pp. 23-33, 2023.
- Nakamura, Seiichi, Takuro Adachi, and Masahiro Ogawa. Japanese Contributions to the Studies of Mesoamerican Civilization(Studies in Ancient Civilizations 1), Institute for the Study of Ancient Civilizations and Cultural Resources,2023.
- Nakamura, Seiichi, Melvin Fuentes, Masahiro Ogawa, Carlos Carbajal. PROARCⅡ: Objectives, Justification, and Preliminary Results (Kanazawa Cultural Resource Studies 28), edited by Seiichi Nakamura, Center for the Ancient Civilizations and Cultural Resources, Kanazawa University, 2021.
- 小川雅洋「マヤ南東地域における地域間交流の研究 ―ホンジュラス、アサクアルパ遺跡出土の黒曜石資料の分析を中心に―」『金沢大学考古学紀要』42号、pp.99-112、2021年。
- Ogawa, Masahiro.”Estudios sobre el juego de pelota en el área sudeste de Mesoamérica -Con referencia especial al análisis de las canchas de pelota en Honduras-“, XXXII Simposio de Investigaciones Arqueológicas en Guatemala 2018 (Tomo 2), Museo Nacional de Arqueología y Etnología,pp.681-692, 2019.