野口淳(のぐちあつし)

所属:次世代考古学研究センター
職階:特任准教授
専門:3D計測・南アジア考古学・旧石器考古学


これまでの研究概要

 日本列島、特に関東平野南部~中部高地の後期旧石器時代を対象に調査と研究をスタートしました。その成果として『武蔵野に残る旧石器人の足跡・砂川遺跡』(新泉社)、『旧石器研究ゼミナール』(分担執筆・同成社)、『講座日本の考古学1旧石器時代・上』(分担執筆・青木書店)を刊行しています。また日本旧石器学会による『日本の旧石器時代遺跡データベース』(http://palaeolithic.jp/data/index.htm)の構築と公開にも取り組んできました。

 また西アジア、アラビア半島、南アジアで、旧石器時代遺跡の発掘調査にも参加してきました。特に南アジア・パキスタンでは南部タール砂漠地域や中北部ソアン川流域などで現代型人類のアジア進出の過程を解明するための遺跡の探索を進めてきました。

 2012年以降、南アジアでの考古学調査記録のために卓上型スキャナーによる3D計測に取り組みを開始しました。現在では、3D計測データによる石器・土器の製作技術などの解明に取り組んでいます。


文化財・文化遺産の保護と活用

 3D計測をはじめ、データベース、GISなどデジタル技術による文化財の保存と利活用を促進するため、新しい技術・手法の開発検証や、普及のための研究会・オンラインサロンを開催し、専門家向けの研修講師を努めています。奈良文化財研究所による文化財担当者研修「デジタルアーカイブ課程」「遺跡地図・GIS課程」、(公財)日本文化財保護協会による発掘調査士補講習「発掘調査の情報処理」をはじめ、自治体・博物館、大学、民間企業などを対象とした講習やワークショップも担当しています。また遺跡・遺構等の3DデータをwebGIS上に掲載する文化財情報デジタルツインプラットフォームの構築にも協力しています(https://gsrt.digiarc.aist.go.jp/nabunken_aist/index.html)。

 海外での支援・技術移転にも取り組んでいます。これまでにパキスタン、ホンジュラスで現地でのワークショップを開催したほか、コロナ禍の期間中は、東南アジア・南アジア・中南米の国々に向けたオンライン・ワークショップも開催しました。次世代考古学研究センターでは、中米グアテマラ・ホンジュラス両国での文化遺産保護のための3D計測技術の支援を進めます。

 博物館活動の意義を評価するための枠組みの検討を行っています(https://www.museumevaluation.net/)。さらに岐阜県飛騨市での石棒クラブによる文化財の普及発進と地域コミュニティ活性化に協力しています(https://hidasuke.com/2021112728report/)。普及と活用は、調査・研究・保護と並ぶ重要なテーマです。学術・行政・市民のそれぞれの活動が相互に連携することで、より多くの知識と価値を生成し社会を豊かにすることに貢献します。


主な著書・論文

  • A. Noguchi, R. Nakamura, Y. Takata, Y. Matsuo, Y. Oya, and S. Uchida. COMPARISON AND EVALUATION OF TLSS AND MOBILE LIDAR SCANNERS FOR MULTI-SCALE 3D DOCUMENTATION OF CULTURAL HERITAGE, 29th CIPA Symposium “Documenting, Understanding, Preserving Cultural Heritage: Humanities and Digital Technologies for Shaping the Future”, Florence, Italy, 25–30 June 2023, Volume XLVIII-M-2-2023, The International Archives of the Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Sciences, 2023 https://doi.org/10.5194/isprs-archives-XLVIII-M-2-2023-1135-2023
  • 『武蔵野に残る旧石器人の足跡・砂川遺跡』新泉社(単著)、2007 http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA91002964
  • 『イスラームと文化財』新泉社(共編著)、2015 ISBN9784787715050
  • 『考古学・文化財デジタルデータのGuides to Good Practice』奈良文化財研究所(共訳)、2022 https://doi.org/10.24484/sitereports.115623(オープンアクセス)
  • 野口 淳「文化遺産の三次元記録への取り組みと課題―パキスタンの事例―」『季刊考古学』140、雄山閣、2017 http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB24818405
  • 野口 淳「現生人類の出アフリカと南廻りでのユーラシア拡散」『季刊考古学』141、雄山閣、2017 http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB25229363
  • 野口 淳・魚津知克「これからの文化財専門職員の人材育成にむけて : デジタル技術と埋蔵文化財調査・保存・活用を中心に」『考古学研究』69(1)、2022 https://cir.nii.ac.jp/crid/1520011318908686976?lang=ja
  • 野口 淳「動向レビュー:文化機関における3次元計測・記録データの管理・公開の意義と課題」『カレントアウェアネス』351、2022 https://doi.org/10.11501/12199170
  • 野口 淳「デジタルアーカイブス時代の文化財3次元計測」『日本画像学会誌』62(1)、2023 https://doi.org/10.11370/isj.62.68
  • 野口 淳「身近な最新技術で文化遺産保護を広める:誰もが取り組める計測記録を目指して」『第31回 文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「技術から見た国際協力のかたち」 』、文化遺産国際協力コンソーシアム、2023 https://www.jcic-heritage.jp/publication/report?cat_id=37